糖尿病の治療方針を決めるにあたって、まず自身のインスリンが出ているのか、出ていないのかが非常に重要になります。当院では初診時にインスリン量(C-ペプチド)を測定し、体の中で起こっている変化を想像しながら、治療を組み立てていきます。
インスリンが出ているのに血糖値が高い場合には、インスリンが効きにくい体質(抵抗性)が原因です。体重を適切に管理することが第一で、場合によって薬剤も使用しますが、まずは食事と運動療法が治療の主体となります。
一方でインスリンが出ていないタイプの糖尿病は、膵臓に働きかけてインスリンを出すような薬剤を使用することもあれば、足りないインスリンを補う(=膵臓を休める)ために、注射を勧める場合がございます。この場合でも食事と運動療法は治療の基本となります。
過去1〜2ヶ月間の平均血糖値を示す指標で、血糖値が正常な人は通常 5.6%未満です。「HbA1cは低いほど良い」と"誤解"されている方がいらっしゃいますが、HbA1c 7%未満であれば「合併症を防ぐ」という治療目標は達成しています。薬剤を使って、より低いHbA1cを目指すことは、低血糖(後述)を増やすことにも繋がるため、その選択は極めて慎重であるべきです。
当院では大学病院をはじめとする多くの糖尿病専門施設で用いられ、最も信頼性が高いとされる「HPLC法(高速液体クロマトグラフィー法)」によるHbA1c分析器を導入しています。
糖尿病で入院すると、「決まった」カロリーの食事が「決まった」時間に提供されます。さらに時間を持て余すしますので、入院中に張り切って運動される方がいらっしゃいます。それを見ながら主治医が薬剤を調整する訳ですが、残念ながら退院した後に悪化する患者さんが大多数です。糖尿病は、退院後の生活(外来)が一番重要です。
当院では生活習慣の改善のために、出来うる限りの支援を行いますが、元から無理だと分かっているような規則的な(入所施設のような)生活を強要することはありません。糖尿病はずっとつきあっていく病気ですので、肩肘張らずに自然体でいきましょう。出来る事から、コツコツと。
現在、血糖値を下げる薬剤は9系統あります。メーカーによる商品の違いを含めると、30種類以上あります。
不要な薬を如何に減量・中止し、整理できるかが、専門医の腕の見せ所だと考えています。場合によっては、患者さんに薬の追加を勧めることもありますが、納得できないまま、治療を強制することはありません。
最近は配合剤の登場によって、医療費と薬の数を同時に減らすことが可能となってきました。
「注射」と聞いて良い顔をする患者さんはいらっしゃいません。以前は「インスリン」以外に糖尿病の注射薬は存在しませんでしたが、最近は(1)低血糖が起こりにくく、(2)食欲・体重も減らす方向に働き、(3)1日1回(または週1回)の注射薬が使われるようになっています。GLP-1受容体作動薬(インクレチン関連薬)と呼ばれる薬です。
当院では、GLP-1受容体作動薬に関して大変豊富な使用経験があり、いわば得意分野です。早期に使用すれば、一定期間後に経口薬に戻すことも可能です。
なお、肥満症に対するGLP-1受容体作動薬の自由(自費)診療は行っておりません。
インスリンを打ち始めて、体重が増えていませんか?
毎日違う生活をしているのに、インスリンだけは決まった量を打っていませんか?
過剰なエネルギーを摂りながら、過剰なインスリンを投与すると、体重は増加しやすくなります。当院では患者さんにあわせて、柔軟なインスリン投与方法を提案いたします。
インスリンの減量、場合によっては中止可能と判断できる患者さんも数多くいらっしゃいます。
「自分は低血糖なんか起こっていない」と思っていませんか? 低血糖で一番恐ろしいのは、「自分では気付かない低血糖」いわゆる「無自覚低血糖」です。
低血糖は脳にダメージを与え、認知能力を低下させるばかりでなく、心臓にも悪影響を及ぼし、ときに命に関わる事態を引き起こします。
当院では、治療経過中に無自覚低血糖が起こっていないかを常に留意しながら、その危険性が低い薬剤を選ぶことを治療の基本にしています。
糖尿病は症状が出なくて当たり前。
症状が出たときは「合併症」の症状です。
当院では、合併症が出てしまってから後悔しないように、患者さんの細小血管症(網膜症・神経障害・腎症)だけでなく、動脈硬化症(脳血管障害・虚血性心臓病・閉塞性動脈硬化症など)の早期発見・管理に努めています。
すべての患者さんのカルテに詳細な情報を記載していますので、必要とあらば瞬時に病状を把握することが出来ます。